みんなで肝試し


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みんながはしゃいでいるバスの中で、私はぼんやりと窓の外を見ていた____

はっ、と目が覚めるとそこは見慣れない部屋だった。さっきまでの景色は夢だったのだろうか。隣で何かが動いた。「ナツミ?」そう私の名前を呼んだのは、同じクラスのケイタだ。周りを見渡すと、高徳小学校3年2組のいつもよく一緒にいる面々が見えた。不安そうな顔でキョロキョロしているのがエリカ、なぜかわくわくしているのがユウトだ。とりあえず互いに無事を確かめあった。

ケイタ: ここどこだよ?

ナツミ: どっかの廃墟みたいだね。

エリカ: 怖いよ

ユウト: なんか肝試しみたいだな!

ナツミ: そんなこと言ってる場合じゃない

               でしょ。

ケイタ: その通りだ。はやく出口を探して

               帰ろう。

ユウト: この建物から出るついでに肝試しみ                   たいな!

エリカ: 怖いけど、ちょっと面白そう

ナツミ,ケイタ:はあ?!

この場でとやかく言っていても仕方がないので、私たちは動き出すことにした。明かりはなくケイタの持っていた懐中電灯を頼りに進んでいく。この建物はかなりボロくなっているけど、思ったより大きいようだ。私はオカルトの類いは信じていないほうだが、たしかにここは出そうな雰囲気がたちこめている。でも、なんだかこの建物には見覚えがある気がするのは私だけだろうか。予想以上の恐怖にみんなも足取りが鈍くなっていく。さすがのユウトも好奇心など消えてしまっているようだ。エリカも私の袖をぎゅっと掴んでいる。先頭を歩くケイタの背中が少し頼もしくみえた。ここは2階らしく、突然一階からかすかに物音が聞こえた。誰かいるのだろうか。みんなの肩がびくつくのがわかった。でも、ここから引き返すわけにはいかないので前進する。しだいに向こう側から足音が近づいてくるのを感じた。鼓動がはやくなる。目も暗闇に慣れてきてある程度何があるのか見えるようになった。大きな鏡の部屋までやってきたその時、向かいの扉から少女が飛び出てきた。その子の口から血が出ていたのだけははっきり目に映った。そして、あまりの驚きと恐怖を隠しきれず、4人全員大声を出して走って引き返してしまった_________

 

私は反対したのだ。こんな夜中にみんなで肝試しなんて。しかもいかにもな廃墟に。もとはなんだったんだろう。隣で舞花が「この格好で肝試しはかなり斬新だよね」とはしゃいでいる。そう、私たちはまるでハロウィンのような格好でこの場所に来ているのだ。骸骨の格好をした猛が「いいじゃん、その血似合ってる似合ってる」と言ってきたが、「ぜんぜん嬉しくないんだけど」と言い返しておく。いよいよ、建物に乗り込もうと扉を開ける。思ったより音が響いて少し驚く。私はこういうのが得意ではないのに、二人が面白がって私を先頭にする。歩を進める度、手汗でライトが滑り落ちそうになる。部屋がたくさんあって、もう使われなくなってカビの生えた水道の蛇口がみえる。ああ、早く帰りたい。きしむ階段をのぼって2階に着いた。そこから4つめの部屋に入ることにした。そこには大きな鏡とピアノがあるらしい。扉の前で立ち止まる。すると、猛が私の背中を押して無理矢理部屋の中へ押し込んだのだ。前を向くと、自分と同じぐらいの身長をした4人の子どもたちがいた。その直後、私をみた4人は奇声をあげて走りだした。私は恐怖のあまり部屋を飛び出し、驚いた二人も走り出して建物の外へ出た。走り際に出口の扉の看板をみた。そこには[高徳小学校]とすすれた字で書いてあった。息を切らして3人で互いに顔を見合わす。舞花が口を開く。「そういえばここってあの小学校だよね。数年前にうちの近所で遠足に向かうバスが大きく転倒したって,,,」そこで舞花は口を閉ざした。どっと疲れた3人はとりあえず解散して家に帰った。母にその話をすると、「ああ、あの事故ねえ。気の毒だったわ、四人の小学生が亡くなったって、あなたと同じ3年生の男の子二人と女の子二人」